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中日新聞8/22☆(社説)伊藤博文とヨン様と 週のはじめに考える



*中日新聞   2010年8月22日
(社説)伊藤博文とヨン様と 週のはじめに考える


 日韓併合条約の調印から二十二日で百年。不幸な時代はあったが「互いに引っ越しができない隣国」です。歴史を学びつつ未来を開きたいものです。
 「日本人といったら、最初に誰を思い浮かべるか」「伊藤博文」
 NHKと韓国の放送局KBSが六、七月に両国民を対象に意識調査をしたところ、韓国人の回答で一位が伊藤博文でした。
 同じ趣旨の質問を日本人にしたら「ペ・ヨンジュン」が一位。テレビドラマ「冬のソナタ」に主演し、「ヨン様」の愛称で人気の韓流スターです。
 三十五年に及んだ植民地支配の歴史を学ぶ韓国人と、大衆文化でしか韓国を知らない日本人。この落差には驚かされました。

 歴史認識の深い溝

 伊藤博文に対する見方も正反対です。
 初代の首相で、帝国憲法の草案をつくり議会制度を整えた。アジア外交の基礎も築いた。これが多くの日本人の知識でしょう。
 韓国人から見れば、伊藤は初代の韓国統監として植民地支配への道を開いた人物です。伊藤を暗殺した安重根(アンジュングン)は独立を目指した英雄だと尊敬されています。
 八月半ば「日韓大学生共同歴史体験」という催しがあり、日韓の若者十人ずつが一週間、両国の史跡を巡り、語り合いました。韓国の東北亜歴史財団の企画です。
 山口県光市にある「伊藤公資料館」を訪ね、伊藤の生涯をまとめた十五分ほどの映像を見ました。日本語のナレーションだけでしたが、韓国の学生は「韓国のことは何も触れていないようだ」とつぶやきました。
 その後、下関にある日清戦争講和条約の会議場跡を見学。条約第一条は「清は朝鮮が独立自主の国であることを確認する」との内容ですが、日本の学生から「日本と中国の戦争なのに、何で朝鮮の話が出てくるんだろう」という声がありました。

 若者の興味幅広く

 歴史に対する知識には、日韓で大きな差があると実感しました。でも、ツアー参加者の感想はさまざまで率直でした。
 韓国のある学生は「日本のアニメが好きで、日本語も勉強している。でも植民地のことを習うと、日本が恨めしく、嫌いになる」と話しました。別の学生は「建築を専攻し、日本の建築家に興味がある。日本という国には好感を持てないが、個人個人を見れば出会うたびに新しい魅力を感じる」という意見でした。
 日本の女子大学生は「祖父が戦時中に朝鮮で鉄道学校に通った。母はいま韓流ドラマに夢中だ。自分の目で韓国という国を直接見たくなった」。ある大学院生は「韓国人の大半は反日だと思い、心配しながら旅行したら皆親切だった。歴史対話をする時は、互いに寛容さが必要では」と語ってくれました。
 相手の国に興味はあるが、歴史問題が出てくると、韓国人は怒りや憎しみを抱く。日本人は気まずさを感じ、「謝罪せよ」と何度も言われると不快感を覚える。これが平均的な姿ではないか。
 中学校の歴史教科書を比較したことがあります。韓国の教科書は植民地時代の記述が六十ページを超え、日本が何をしたか、韓国人はどんな扱いを受けたか、詳細に説明しています。一方、日本の教科書では朝鮮半島の近代史に関する記述はすべて合わせても二、三ページにすぎません。
 教える内容が違いすぎるので、日本人は歴史をよく知らず、韓国側は繰り返し謝罪を要求するという悪循環になっています。
 ただ、国と民族が異なる以上、同じ史実、解釈を教えることはできません。異なる歴史認識については双方が議論を重ねて溝を埋めていき、成果をそれぞれの教科書に反映させるのが望ましいと考えます。
 併合から百年といっても、国交正常化以後の四十五年間は協力の時代です。日韓は共に民主主義と市場経済の発展を目指し、韓国の経済成長には日本の資金、技術協力も役立ったはずです。
 日韓国民の意識には相手に対する好感と、その逆の嫌悪感が交錯しているようです。そろそろ「愛憎半ば」の感情を超えて、前に進む時ではないでしょうか。

 共通の課題も多い

 経済や文化、科学技術など、日韓が交流、協力できる分野はさまざまです。少子高齢化、若者の就職難、中国産品に押される国内市場など、社会構造でも共通の課題を抱えています。
 両国の人の往来は今年約五百万人になる見通し。互いの歌や映画、ファッションや食文化への関心も高いようです。
 文化や情緒を尊重し合いながら、日韓の新しい百年のスタートを切るべきです。
by joonkoala | 2010-08-22 18:25 | ぺ・ヨンジュン
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