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毎日新聞7/22☆特集ワイド:自殺大国、韓国の「苦悩」 背景に日本と共通点




*毎日新聞   2010/07/22 夕刊
特集ワイド:自殺大国、韓国の「苦悩」 背景に日本と共通点


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自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)でみると、97年の19・8が、98年には26・9に上昇。1年で7ポイントも増えた


 ◇「両極化」--大卒就職率5割
 ◇「ウリ社会」崩壊--募る孤独


 人気俳優のパク・ヨンハさんなど、韓国で著名人の自殺が相次いでいる。盧武鉉(ノムヒョン)前大統領の自殺(09年5月)も記憶に新しい。韓国では近年、自殺者が急増している。背景を探ると、「自殺大国」日本との共通点が見えてきた。【山寺香】

 ■著名人も相次ぎ

 パクさんの他に、韓国芸能界では女優のチェ・ジンシルさん(08年)、女性タレントのチャン・ジャヨンさん(09年)などが自ら命を絶った。経済界でも03年、財閥「現代グループ」傘下企業の鄭夢憲(チョンモンホン)会長が、北朝鮮への不正送金事件の公判中に飛び降り自殺している。

 韓国警察庁によると、自殺者数は97年には9109人だったが、98年には一気に3000人以上増え1万2458人に。その後高止まりを続け、08年には1万2270人だった。

 自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)でみると、97年の19・8が、98年には26・9に上昇。1年で7ポイントも増えた。韓国の自殺率は、03年に日本やハンガリーを上回り、経済協力開発機構(OECD)加盟国中トップとなった。

 韓国と日本の自殺者数は、共に97年から98年にかけて急増し、その後ずっと高止まりしている。グラフにすると、よく似た曲線を描いている=グラフ参照。

 97年は、両国の経済が深刻な打撃を受けた年。日本では山一証券が自主廃業し北海道拓殖銀行など金融機関が相次いで経営破綻(はたん)した。87年に軍事政権から民主政権に移行し順調な経済発展を続けていた韓国も、97年にアジア通貨危機に見舞われた。静岡県立大の小針進教授(韓国社会論)によると、韓国はこの危機を国際通貨基金(IMF)からの緊急融資で乗り切ったものの、引き換えに金融や労働、企業などの改革を迫られ、社会・経済構造が激変したという。


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 特に大きな変化は、非正規雇用者の増加と格差拡大だ。

 韓国の非正規雇用率は01年には26・8%だったが、04年には37・0%に上昇した。小針教授によると、韓国では盧武鉉政権下の04年ごろから「両極化」(日本でいう「格差」)が指摘され始め、急速に拡大した。09年は33・4%で3人に1人が非正規雇用者であり、日本とほぼ同水準だ。深刻なのは若者の雇用で、09年の20~24歳の非正規雇用率は41・0%と高い。大卒の正規就業率はわずか5割という。

 こうした変化は、小泉純一郎政権下の構造改革で規制緩和が進むとともに、自殺者も高水準にとどまった日本社会とよく似ている。小針教授は「経済のグローバル化や新自由主義的な傾向の強まりもあり、一度落ちたらはい上がれないという不安感が強まっている」とも話す。

 韓国社会のストレスを高めている別の要因として、小針教授は受験競争の激しさを指摘する。

 日本の大学進学率が5割程度なのに対し、韓国は8割。ソウルの有名大学を目指した競争は、し烈を極め、小中学校からの子どもの早期留学に母が同行し、父は韓国から仕送りするケースも多い。一流大学や大企業に入れるかで、勝ち組と負け組がはっきりと区分されるからだ。

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 ■楽天的から一変

 自殺者増加の要因と考えられる変化は、経済情勢だけではない。「コリア・レポート」の辺真一(ピョンジンイル)編集長は「日本には昔から切腹のような失敗の責任の取り方があるが、韓国にはそういう考え方は無かった。韓国は、同じ半島にあり、国民性が似ているとされるイタリアのように『ケセラセラ(なるようになる)』と楽天的でくよくよしないとされてきたので自殺が増えるとは思っていなかった。しかし、ここ10年くらいは従来の物差しでは測れなくなったと感じる」と話す。

 この原因として辺さんは、韓国で伝統的に続く「ウリ」社会が崩壊しつつあるのではないかと指摘する。

 辺さんによると、ウリとは「我が」「我ら」の意味。韓国では、我が国、我が家族、我が友などの言葉が日常的に使われ、ウリの内部のきずなは非常に強い。何か困ったことがあれば、ウリの中の人が助けてくれる社会なのだ。

 儒教の国である韓国は忠孝精神が重んじられ、これまで3世代同居は当たり前だった。子どもは親を敬い、亡くなったパクさんも末期がんの父親を自宅で看護し心を痛めていたように「年老いた両親を老人ホームに入れるのは許されない」という考えが根強い。一方で、08年の出生率は1・19人まで落ち込み(日本は1・37人)日本以上に急速に少子高齢化が進む。核家族化が進み、近年は高齢者の孤独死が社会問題になりつつある。

 韓国統計庁によると、08年の自殺率は20~40代が20台なのに対し、50代が32・9、60代が47・2、70代が72、80代以上が112・9と高齢になるほど顕著に高まる。日本で50~60代の中高年が高いのと異なる。

 自死遺族問題に詳しく韓国の自殺研究者とも交流がある福山清蔵・立教大教授は「これまでは儒教精神で高齢者の権威が守られてきたが、少子高齢化やソウル一極集中で大家族が解体し、子どもを一生懸命に支援してきた田舎の親は顧みられなくなった。従来とギャップが大きい分、自分が必要とされていないという孤独感を強く意識させられるのではないか」と分析する。

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 ■ネット中傷も

 また、韓国の自殺問題では特に芸能人について、インターネットでの中傷との関係がよく指摘される。小針教授によると、韓国ではテレビの出演者などに「公人」としての規範意識を強く求める傾向があるという。そのため規範に反する行動は徹底的なバッシングの対象になりやすい。インターネット普及率も8割と世界有数の高さで、バッシングを過熱させているとみられる。

 各国の自殺問題に詳しい青森県上十三保健所の反町吉秀所長は「日本ほど失業率と自殺率の相関が高い国はなく、韓国も推移がよく似ている」と言う。反町さんによると、スウェーデンでは90年代半ばに失業率が2%から8%に急増したが、自殺率は上がらなかった。セーフティーネットが整備されていたことも一因だが、仕事や家族をどうとらえるかの文化的背景が強く影響しているという。

 反町さんは「日韓は官僚統治システムによる縦割り行政など、政治システムがよく似ている。自殺対策に共同で取り組むことは有効だ」と話している。
by joonkoala | 2010-07-23 07:35 | 韓国
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